前月に続き当ブログの姉妹サイトの「策定のメリット」に関する記事を引用してみます
「BCP策定により期待される経営上のメリット」について ②
BCPの一次的な目的は「被災後の事業継続を図っていくための経営戦略」といえますが、次のような経営上の課題におけるメリットも挙げられます。(その2)
経営改善においても有効な要素を展開できます。
- 従業員のモチベーションの維持
被災時における雇用不安の解消等 - “見える化”
仕事内容の可視化
→誰でも対応ができるように! - トラブル事例対応教育
事故災害トラブル時のロールプレイング
“リスクアセスメント”の実施
<例>リスクアセスメントによるリスクの洗い出しの過程で、現場作業の洗い出しを詰めることにより、現場の状況をより精確につかめるようになった。 - “5S”、“環境整備”等の活動に防災の要素を取り入れる
「整理」「整頓」「清掃」「仕組みづくり」「セキュリティ」「安全管理」 - 日常の防災訓練
- コスト削減と代替案の検討
代替生産方法 等 - 日常におけるIT技術の修得
- 外部とのリスクコミュニケーション
活動のアピール
有事におけるサービス提供の説明責任の明示
→企業への信頼獲得、営業力の強化 - 日常業務における社員の多能工化
担当者不在でも、業務をこなれる社員を増やしておく→効率的な改善へとつながる
<例>如何に生産工程を簡単にできるか突き詰め、誰でも作業を実施できるように改善を図った。その結果、必要な人員の削減(コスト削減)へとつながった。
<例>ある周期を決めて、ジョブローテーションを行って、多能工化を図った結果、従業員のスキルアップとともに1人当たりの生産性も向上した。 - IT活用
平時からのデータバックアップ方法、データ活用方法を身につける
<例>IT化によりスペース効率化につながった。 - 事業承継との関連事項の整理
現状把握、理念の整理等々- 会社の現状把握
--資産、従業員の数/年齢構成、資金繰り、負債、業界での位置付け 等々 - 経営者の状況把握
--保有自社株式、その他個人資産の価値、負債、個人保障 等 - 重要業務の再検討
→新規事業の検討 - 代替責任者(後継者のリストアップ)
→幹部社員の育成
- 会社の現状把握
上記と同様に、FCP作成においても、「災害対応への認識の深め等」下記のようなメリットを挙げることが出来ます。
- 文書化等の“見える化”による危機意識の共有
- 防災訓練への取組み姿勢の変化
- 災害時のロールプレイング(頭の中、或いは机上でも可能)訓練
- 日常の“3S(整理・整頓・清掃)”、“環境整備”等へのきっかけとなる
- 災害時の対応コストの把握、対応の修正
- 日常におけるIT技術活用への認識
- 意思の疎通の重要性の再認識(外部とのリスクコミュニケーション等)
想定される危機に正対し、日常における災害対応手順等を検討していくことは、不安要素が明らかとなり、漠とした不安感の軽減にもなります。
<参考>
【被災地の物資と口コミ】
日本大学教授 中森広道氏が、<雑誌「安全と健康」2021年12月号>において、
『災害の際には、物資など生活に関する情報については口コミに依存することが多く、流言も広まりやすい。
流言の発生を完全に防ぐことは難しいが、流言による混乱は、工夫によって防ぐことができるかもしれない。』
と、説かれています。
日頃の心構えとして参考になる内容です。
筆者らの研究グループは、2011年の東日本大震災における津波被害地で、住民へのアンケートを行ない、「情報を得るために役に立ったもの」について複数回答で質問をした。
すると、「口コミ」と回答した人は、地震から数日間では全体の22%、地震から1ヵ月後では全体の20%という結果が出た。
1995年の阪神淡路大震災の際に兵庫県が行った調査結果(下表)も参考になる。
第1位(%) | 第2位(%) | 第3位(%) | |
給水車 | 口コミ(54.9) | 情報なし(30.4) | 自治会(10.7) |
物資の配給 | 情報なし(41.6) | 口コミ(32.6) | 自治会(11.7) |
交通の復旧 | テレビ(82.2) | 新聞(52.9) | ラジオ(18.3) |
店舗の開店 | 口コミ(48.7) | 情報なし(21.3) | チラシ(19.9) |
病院 | 新聞(29.7) | テレビ(23.7) | 情報なし(20.0) |
「交通の復旧」「病院」についてはテレビ・新聞・ラジオといったマスメディアが主な情報の入手方法となったようだ。
しかし、「給水車」「物資の配給」「店舗の開店」については主な情報の入手方法は口コミであり、マスメディアは上位3位には挙がっていない。
人々の生活に必要な生活物資に関する情報は口コミで得ることが多くなり、災害時に情報を得る上で役に立った手段として、口コミは一定の評価を受けるようだ。
口コミが多いということは、情報の錯綜も増え、根拠が曖昧な情報が多くなってしまう。
そのような事情から、災害時には、物資や生活に関わる流言が広まりやすくなると考えられる。
一つの対策として挙げられることは、しっかりとした「記録」をとることであろう。
何か情報が入ってきた場合には、その情報の内容や入手日時・入手方法(いつ、誰が、どこから情報を得たのか)を詳しく記録し、その記録を共有できるようにしておく。
そのようにしておけば、複数の人々での確認が容易となり、信憑性についての評価がしやすくなる。
また、同じような内容の情報が複数の方面から入ってきた場合に、その情報の中にわずかでも食い違いがある場合には、それらの情報は流言の可能性があることが分かるというわけである。
さらに、これに関連して、災害時の「情報の整理」も必要となるであろう。
大量化した情報を、積極的に整理し有効に活用していく準備をすることも求められているのではないだろうか。