避難所生活について具体的に深めていくことは、体験がない限り限界を感じます。
また、個々の避難場所においても、それぞれの環境&運営体制があろうと思います。
先ずは、一般的に言われている避難時における留意事項を前回に続きピックアップしてみます。
(以前記事の再掲になるかもしれませんが、再度考えてみたいと思います。)
◎飲料水、食糧の確保について
取り敢えず「3日分の飲料水、食糧の確保」が言われています。
非常備蓄品の取り出しという自足の生活が基本となると考えられます。
以後、救援物資を待つことになると思いますが、被害が広域に及んだ場合、食品等の補給が間に合うかどうかの懸念があります。
◎健康管理について
避難所での健康管理は、日常と違った環境の中で、大きな課題になってきます。
主な留意点として、下記が挙げられています。
○メンタルケア
<心的負担>
被害時、被災者には様々な心理的負担がかかってきます。
- 『心的トラウマ(心のきず)』は、生命危機の恐怖や他人の死傷の目撃などにより生じます。
- 『悲嘆』は、身内との死別、喪失により生じます。
- 『ストレス』は、慣れない避難生活に伴う種々の状況によって生じます。
<心のケア>
お互いに配慮を持って対応することが大切です。
- 話をしましょう。
家族や近所、グループで話をしましょう。 - 傾聴しましょう。
人の話に(心情的に)耳を傾けましょう。
○エコノミー症候群
避難生活所、車中泊等で、長時間同じ姿勢(とくに足を曲げた姿勢)をとることで、下肢に血栓(血の塊)ができて、ひどくなると、肺塞栓等を引き起こすことがあるといわれています。
<症状>
- 最初は症状がなく、進行すると足の痛み、むくみなどが出てきます。
- 肺塞栓症は胸の痛み、呼吸困難等の症状が起こり、ひどい時には心肺停止状態へと進むといわれます。
<予防>
- 水分を適度に摂る
最低でも1日750mlの水分が必要 - 適度な運動
同じ姿勢を長引かせず、適度に屈伸運動、足首の運動などをする。 - ゆったりとした服装
体を強く締め付けるような服装は、血行を悪くして血栓ができやすくなる。 - 弾性ストッキング
下肢に適度な圧迫を加えることで、血栓防止効果がある。
○熱中症
生活環境において、冷房設備の不備、水分補給の不足等で熱中症のリスクが高まります。
特に昨今の夏季の高温には要注意です。
- マスクで熱がこもったり、水分摂取が減ることが予想されます。
屋外で充分な距離が取れる時はマスクを外す。
(運動や作業中は3密を避けてマスクを外す。) - エアコンを有効に活用する。
定期的な換気の確保にも気をつける。 - ふらつきや疲労感など少しでも異常を感じたら日陰に入って 早めに休憩をとる。
保冷剤、氷、水などを使用して身体を冷やす。 - 意識してこまめに水分を摂る。
復旧作業に出かける等の時には、必ず水、補水液、スポーツドリンクなどを持って出かける。
○持病のある方への対応
人工透析中、酸素療法中、喘息、食物アレルギー、精神疾患をはじめ、災害時要注意者への配慮が必要となります。
<喘息>
- ほこりやペット、タバコなどで発作が起こる場合があります。
<食物アレルギー>
- 配布される弁当などに食べられない食材が入っている場合もあります。
(状況によっては、アレルギー 除去食が提供できることもあるとのことです)
<精神疾患>
- 集団での生活が困難な場合などは申し出ましょう。
<その他>
- 災害時要配慮者(高齢者、妊婦、小児など)の方が家族にいる場合は、管理者との相談が必要となります。
<常備薬について>
- 避難所には、常備薬を持参することを忘れない。
- お薬手帳の持参も忘れないこと
避難所では、欠かすことのできない常用薬の処方を受ける必要が出てきます。
その際にお薬手帳があると処方がスムーズに進みます。
(お薬手帳の内容をコピーし、非常時に持ち出せるよう準備しておく等の配慮も必要です。)
○感染症対策
避難所では集団感染(クラスター)が発生しやすくなります。
--新型コロナウイルス等への対応は大きな課題です。
避難所では3密を避けるような工夫が考えられていると思いますが、避難者自身も対応を心がけなくてはなりません。
<飛沫感染と接触感染予防>
新型コロナウイルスは、鼻や口からの飛沫感染と、ウイルスが付着したところを触って感染する接触感染で広がります。
- マスクの装着
- 手指の消毒
手洗い、アルコールでの手指消毒は出入りの際、必ず実施。 - 日常における3密(密閉・密集・密接)を避ける。
<お互いを尊重する>
新型コロナウイルス等感染症とは共存せざるを得ない状況になる可能性があります。
(“感染症ゼロ” はあり得ません)
人の行動により感染を減らすことができます。
避難生活においては、普段以上に周りの人への気配りが大きな意味を持つようになると思われます。
以上、避難生活における留意事項として挙げられている項目についてピックアップしてみましたが、生活環境が一変し、ここに取り上げた項目だけ考えても大変です。
ましてや、その状況が長く続くかもしれません。
筆者なんかは睡眠不足が続きストレスが大となることが想像され、その先行きを心配します。
<参考>
メンタルヘルスに関連する最近読んだ記事があります。
東京大学名誉教授の畑村洋太郎氏の「福島原発事故に学ぶ」<雑誌「安全と健康」2021/4>の一部です。
チェルノブイリ原発事故では、汚染地域に残った人の方が、避難した人たちより7年も長命だったという報告がある。
事故後速やかに地元を復興して帰還できるようにしなければ、避難した人たちは避難先での新しい暮らしを始めてしまう。
故郷に思いを馳せながら、心穏やかでない生活を余儀なくされ、その精神的ストレスが寿命に大きな影響を与えたと推察される。