ちょっとした贈り物の話

第一次世界大戦時のドイツ兵についての話
敵地へ乗り込み、敵兵を捕えて連れかえり、敵情を尋問することを専門にする兵士がいました。
彼は戦線の間をうまく切り抜けて、塹壕に1人でいた敵兵の奇襲に成功します。
いきなり襲われるとは夢にも思わずに食事をしていた敵兵は、簡単に武器を取り上げられてしまいました。
手に1枚のパンを持っていたこの敵兵のは、突然囚われの身となって震えあがり、生涯で最も重要だったかもしれない行動に出ました。
自分を捕らえた相手に持っていたパンを少しあげたのです。
この贈り物にいたく感激したドイツ兵は、自分の任務を果たすことが出来なくなってしまいました。
恩恵を施してくれた相手から踵(きびす)を返すと、任務を放棄して自陣へと戻りました。
(上官たちにひどく叱られたそうです。)

ある武装強盗事件の話
ワシントンで催されたディナーパーティーに武装強盗が押し入り、銃を振りまわしながら金銭を要求しました。
ところがその強盗は途中で心変わりを起こし、謝罪の言葉を述べると会場から立ち去ったのです。
きっかけは、残っていたワインとチーズを勧められたことでした。

『反報性のルール』from「影響力の武器」(ロバート・B・チャルディーニ著)

ちょっとした贈り物に人は“心変わり”を起こすこともあるという話しです。