2015/04/05 徳島空港管制ミス

2015年4月5日11時 徳島空港で管制ミスによる重大インシデント(事故は起きなかったが一歩間違えば大惨事)が発生しました。

新聞各紙等の情報をまとめてみますと--

<事故の概要>

  • 4月5日午前11時ごろ、徳島空港に着陸しようとした羽田発の日本航空455便ボーイング767が、滑走路上で作業中の車両を発見、着陸を中断し、やり直すトラブルがあった。
  • 滑走路に車両があるのに管制官が着陸許可を出し、日航機が着陸をやり直したトラブルで、日航機が車を発見してから回避のために急上昇するまで15秒程度だったとみられることが国土交通省航空局への取材でわかった。
  • 管制を担当する海上自衛隊徳島教育航空群によると、管制官が車両に無線で退避を指示するのを忘れ、着陸許可を出していた。乗客59人、乗員8人にけがはなかった。
  • 徳島空港は海自が管理運営。滑走路は1本で、民間機と共用している。

<管制ミスの状況>

  • 管制を担当する海上自衛隊徳島教育航空群の管制官が車両への退避指示を出し忘れた上、目視による確認をせずに着陸許可を出したのが原因とされている。
  • 同航空群によると、管制官は5日午前10時40分、作業車へ滑走路への進入を許可した。
  • 車には業務委託先の外部社員1人が乗車していた。その15分後の午前10時55分に、日航機に着陸を許可したが、作業車には滑走路外への退避を指示していなかった。
  • 管制官は「指示を出すのを失念していた」と話している。
  • 通常は管制官4人が、地上や空港周辺の目視と離着陸の指示などの航空管制業務を分担している。ところが、トラブル発生時、管制室には1人しかおらず、他の3人は管制塔内で別の作業をしていたという。内規では、航空機の発着状況によっては1人の対応も認めているからだ。
  • 広報室は「土日曜は訓練飛行を行わずに民間機しか発着しないため、管制業務は1人でも担当が可能で、法的にも問題はない」と説明している。

<民間作業車の説明>

  • 車両は航空群から委託を受けた民間業者のもので、滑走路上の距離を示す距離灯のランプが切れたため、取り換え作業中だった。
  • 業者による取り換え作業は午前10時37分~11時5分の予定で、着陸予定時刻は10時55分だった。車両は10時43分に滑走路に進入している。
  • そもそも作業時間の設定に問題があったのではないだろうか。(徳島新聞)

<機長の事故の回避>

  • 国土交通省によると、着陸許可を受けた日航機は滑走路の東側から車輪を出して進入。滑走路の東端付近で副操縦士が2,500メートルの滑走路の中間地点付近で白い作業車を発見し、機長が着陸回避を決断した。車輪は作業車の約800メートル手前で接地したが、急上昇で危険を回避した。この間、約15秒だったとみている。
  • 着陸直前の旅客機の速度は通常、時速約200キロといわれる。
    最悪の事態は、パイロットの好判断によって間一髪で回避されたのである。
  • 日航機は約30分後に着陸。日航によると風の変化のため2回目もやり直し、3回目で無事着陸した。機体に損傷はなく、到着後、運航を続けた。

<事後の対応状況>

  • もし悪天候で視界が悪ければどうなっていたのだろうか?。背筋が寒くなる。
  • 国土交通省は、事故につながりかねない「重大インシデント」と認定。
    運輸安全委員会は原因究明のために航空事故調査官2人を徳島空港に派遣し、調査を本格化させている。

非常にインパクトのある映像も公開されています。

報道各紙は管制官1人体制に焦点を当てていますが、上記各紙の記事の中で、徳島新聞において指摘されている「そもそも作業時間の設定に問題があったのではないだろうか。」という点が気になります。

なぜその時刻に作業車が入っていたのか?
もちろん、最終的には管制官が許可することになるのでしょうが、その時間帯の作業を設定したのはどうしてなのだろうか?という疑問が出てきます。

この点に関連して、下記の記事が載っています。
ある主婦の言として
距離を示すランプの交換作業が航空機の離着陸時に滑走路上で行われていたことに驚いた様子で「飛行機が離着陸しない夜間に作業できないのか」と注文を付けた。

民間業者は作業の許可を得るのに、先ず自衛隊担当窓口の許可を得なければならないはず。その時に作業時間帯の適否のチェックができなかったのか?
そもそもその時間帯の作業を言い出したのは官民どちらか?
到着機の時刻は事前に分かっていたはず!
--少なくともその業に当たる者はその時刻に注意を払わないということはあり得ないと思えるが--
民間作業者が言い出したのか?
--しかし許可を与えるのは自衛隊担当のはず
それとも自衛隊担当の指示によるものか?

最終的には、パイロットの正確な判断により惨事は回避されたのでありますが
まさに「事故のスイスチーズモデル」の最後の穴がふさがったということになります。

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2015/05/05 徳島新聞の記事

徳島空港着陸トラブル1ヵ月
なぜ1人だけで管制する事態になったのか、いまだ明らかになっていない

 


※スイスチーズモデル

事故防止のために多くの防護策が設けられており、ひとつの防護策が破られても次の防護策によって事故に至るのを防ぐようにしている。
しかし、いずれの防護策にもスライスしたスイスチーズのように大小の穴(危険性又は有害性の穴)があいており、(たまたま)ある状況下ですべての防護策の穴が重なると、事故に至ることを示すモデル。

事故のスイスチーズモデル

 

 

 

 

図は防衛取得研究(19年度調査研究報告1/2)
「スイスチーズモデルと情報セキュリティ:研究員菊池浩氏」文献より