排煙設備の設置が義務づけられた背景には、1968(昭和43)年11月のU温泉Mホテル火災(30名死亡、44名負傷)、1969(昭和44)年2月B温泉Bホテル火災(30名死亡、41名負傷)などの大火災事故があり、また、火災による死亡原因の調査の結果、火災時における煙による一酸化炭素中毒死亡者が全体の59%あまりであったことから、排煙を行うことにより初期避難を容易にすることが考えられるため、1970(昭和45)年に建築基準法の改正が行われ、排煙設備の設置が義務づけられたものである。
しかし、それ以前に建てられた建築物は、法的に既存不遡及の規定により排煙設備の設置を義務づけられていないことから、既存建築物において火災に伴う大事故が発生した。(下記)
- 1972(昭和47)年 大阪府Sデパート火災 118名死亡
- 1973(昭和48)年 熊本県Tデパート火災 104名死亡
排煙設備における指摘事項等の問題点
【完了検査持における指摘事項の例】
- 同一排煙区画内における異種排煙(自然排煙と機械排煙)
- 排煙機の静圧が高いため、窓の避難ドアが開かない。
- 中央管理室(防災センター)において排煙設備の制御、監視ができない。
- 地下部分の機械排煙の排煙出口が、屋外のバルコニーまたは階段に面し、避難上支障がある。
- 排煙機が作動しても空調機が停止しない。
- 天井ジャンパー方式の排煙口が局部的に設けられている。
- メインダクトの床貫通部にHFD(排煙ダクト用防火ダンパー)が設けられているため、他の区画の排煙ができない。
- 天井吊り排煙ファンが当該防煙区画の天井裏に設けられ、火災時に排煙機能を損なう恐れがある。
- 附室の給気風道の取込みが、低層階からでなく最上階からとなっている。
- 排煙ファンの出口側にHFDが設けられているため、他の区画の排煙ができない。
【定期検査持における指摘事項の例】
- 間仕切り壁を設けたため、排煙口のない部屋がある。
- 排煙口の手動開放装置のワイヤーなどが動かず、排煙口が開かない。
- 附室の排煙で、排煙口と給気口が連動しない。
- 排煙口を開放したら風圧により排煙口が再び閉じてしまう。
- 排煙ダクトの温度ヒューズは、防火ダンパー用のもの(280℃)であるべきものが一般換気用もの(72℃)が取り付けられている。
From「建築設備士更新講習テキスト2000年版」