①で設備管理に関連するリスクについて取り上げたのですが、挙げれば切りがありません。
BCP(事業継続計画)との関連においても、日常の活動の中で「リスクの洗い出し」と「その対応策の検討」を深めていく必要があります。
取り上げた各々の危険事象について、その「影響度(被害の大きさ)」「発生・遭遇の頻度・可能性」「対応の回避・困難性」という評価軸でそのリスクを評価し、対応していくということになります。
これらのリスク要因については、責任者の方は当然に目論まれていることだと思いますが、関係する人達とその内容を共有しておくこと、そして説明のため文書化等も必要となります。
<リスクの洗い出し>
考えられる災害・事故等の危険事象については、それらに起因した各施設における危険事象を生起する危険源を、各施設の状況に応じて、漏れのないように洗い出していく必要があります。
因みに、前回ピックアップした「地震」「火災」「風水害」停電」等について、リスクの洗い出しの取っ掛かりとして、考えられる危険源を再度挙げてみますと---
地震によるハザード&危険事象
- 地震動(揺れ)
--建築物倒壊、設備・備品等の移動
(負傷、圧死) - 地震による液状化の発生
--家屋倒壊、家具・設備・備品等の移動
(負傷、圧死) - 地震に起因する火災
--初期消火の失敗、通報の遅れ、避難遅れ
(焼死、一酸化炭素中毒死、負傷) - 津波による浸水
--水没
(水死、水損) - エネルギー等のインフラ供給停止
- ---
⇒事前対応不備の検討
火災によるハザード&危険事象
- 火災の発生
--各種火災
(電気火災等) - 避難遅れ、初期消火の失敗、通報の遅れ
- 火災の拡大
--焼死、一酸化炭素中毒死、負傷
財産の損失
社会的責任問題の生起 - ---
⇒出火起因物(原因&傾向分析?)、事前対応不備の検討
風水害によるハザード&危険事象
- 台風(雨・風・洪水)
--建築物破壊、水没・浸水
(水死、家屋破損、漏水:水損) - 集中豪雨(雨・洪水)
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その他自然災害によるハザード&危険事象
- 雷・猛暑・寒波等による各種被害
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感染症・中毒の蔓延によるハザード&危険事象
- 集団感染・インフルエンザ・食中毒による業務停止等
科学社会事故一般(交通事故・インフラ事故他)によるハザード&危険事象
- 建築関係
--倒壊 他 - 設備関係
--停電・感電、冷暖房停止、ガス等の燃料停止、漏水(給排水関係)、通信関係の停止 - 交通関係
--交通事故、通行困難(使用道路の閉塞) - 活動資源の供給停止
- 停電、断水、燃料停止
- 情報通信
--電話、インターネットの使用不可
--パソコン等情報機器の破損
--データ等重要書類の損失 - 人
--従業員の勤務困難(3割程度の稼動)
--従業員等の負傷
※設備管理・施設管理は「人」の要素が大き業務!
挙げれば切りがありませんが、警備員教育と同じように、リスクの内容を反芻検討し、深耕していくことにリスクアセスメントの真意があります。
周囲環境は変化するので、この活動は継続していくことが大切です。
その際、「~~であれば(ホワットイフ)」の問いかけで深めていくという方法があります。
「…したらどうなるか?」と自問してみる。
--「○○が破損したらどうなるのか?」「○○がダウンしたらどうなるのか?」というような自問してみる。
※「ヒヤリ・ハット&気がかり事項」の活用も考えられます。
そして、これらを原因としてどのような望ましくない事象へと発展していく過程の考察を深めていくことができます。
この検討過程で対応策が見えてくるかもしれません。
また好ましくない事象が気になるのであれば、その原因となる要因を掘り下げていくという方法も考えられます
「ナゼナゼ」で深めていくという手法もあります。
例えば、「○○で火災が発生したら--?」というようなケースで、火災の原因系を掘り下げることによりいくつかの防止策も見えてくるかもしれません。
ビル設備管理技術者は、日常のビル内環境を快適・利便・経済性を念頭に維持運営しながら、このような非常(異常)事態への対応も準備しておく必要があります。