⑤波及事故

電気供給者の配電線を停止させる「波及事故」は、毎年の事故総数のうち70~80%を占めており、隣接する施設も停電となり、社会的影響は大きなモノとなります。
波及事故の原因は多様ですが、下記のような事故等が発生しています。
波及事故の特徴としては、事故の9割近くが主遮断装置(CB、PF付LBS等)自体或いはその電源側で発生しているとのデータもあります。

保守不備(自然劣化)例
  • 引き込みケーブルや変電設備の高圧機器の自然劣化によるもの。
  • 高圧引き込みケーブルが水トリーにより絶縁が低下し地絡。

<対策例>
・定期的に高圧ケーブルの点検の実施
・劣化の兆候が確認された場合は速やかに更新等の対応
--水トリー現象に強いE-Eタイプ(外部半導電層が押出成形)の採用等

保守不備(他物接触)例
  • 高圧機器部分に、ネズミなどの小動物が侵入して接触したことによるもの。
保守不備(保守不完全)例
  • 点検不良などの保守不完全によるもの
  • 気中開閉器の操作不良による機器焼損事故
  • 地絡継電器(GR)の電源喪失には要注意!
  • 地絡継電器(GR)の保護範囲外の事故に注意!
作業者過失例
  • 建築物の改修工事などに伴う敷地内掘削時のパワーショベル、ユンボなどによる既埋設ケーブルの損傷によるもの。
設備不備(製作不完全・施工不完全)
自然現象(風雨・雷 他)例
  • 塩分の付着による波及事故
    台風等の風雨により、海岸から離れていても、塩分が運ばれてくる。
    運ばれた塩分と雨により、絶縁表面に漏洩電流が発生し、火災等を生起することにもなる。
    (海岸近くの電気設備は常に潮風に晒されている。)
    地絡継電器の保護範囲外での事故の場合、波及事故となる。
  • 引き込み線からの侵入雷サージによるもの。
  • 飛来物接触により、PAS内部に雨水が浸入し発錆が進展し、短絡・地絡・波及事故となった。

<対策例>
・台風や豪雨等による電気設備の浸水冠水等を防ぐための浸水防止策。
・台風で飛ばないよう固定する等の事前対策。
・台風が通過した後の飛来物等の電気設備への接触状況の巡視点検。

その他(火災 他)例
  • 受電設備の近くに設置された焼却炉の煤煙による波及事故
    煤煙のススが高圧ケーブルヘッド部に付き、降雨によりトラッキング現象が生じ、絶縁破壊を起こした。