苦難の受け⽌め⽅ ①

Hさんは、⼤学卒業後数年間の会社員経験を経て、建築会社を創⽴します。
会社は時勢もあり、順調に成⻑していきました。
社会的経済的に成功することが幸福への道とHさんは信じていました。
また、社会活動にも精を出しました。
そのような中、講演会で「成功と幸福は違う」「⼈間は⽣かされている」という⾔葉に出合います。
会社は成⻑を続けますが、社内には問題が次々と発⽣します。
Hさんは、ある⼈に勧められて再度前回の研修会に⾜を運びます。
「真の親孝⾏とは親に安⼼・満⾜をあたえること」という話しを聴いたとき、形にとらわれた物質的な親孝⾏ばかりしていた⾃分に気づきます。
そして、「⾃分が変われば相⼿も変わる」という⾔葉に、相⼿に持っていた要求⼼に気づきます。
「⾃分の考え⽅、思いと⾏為の累積によって運命は変えられる」という話には驚きを感じます。
Hさんは、会社の幹部の⼈達にもこのような勉強をしてもらおうと努⼒します。
そして、会社の中の雰囲気も次第にやわらかくなっていきました。
ところが、60歳を過ぎたころ、⽕事と病気という苦難がHさんに降りかかってきます。
⽕事は正⽉の深夜に発⽣しました。
⽕勢は強く隣家に燃え移る勢いでした。
それを⾒たHさんは、思わず「私の家は燃えてもいいから、隣の家だけは燃やさないでくれ」と消防⼠に頼みました。
その⾔葉を聞いた消防⼠は、消⽕ホースの⽔をシャワー状にして隣家の壁にかけ続けました。
幸いに、けが⼈も出ず、隣家も焦げ⼀つ付かなかったとのことです。
Hさんは、焼け落ちた家を⾒ても、なぜか落ち着いていたそうです。
⾃分はともかく、周囲への迷惑を最⼩限に抑えられたという思いがあったそうです。
Hさんは、60歳後半のころ、癌になります。
ところが、Hさんは病名を聴いても、致命的になるとは考えませんでした。
そして、この苦難においても「⼈の⼼の痛み」という気づきを得ます。
術後は順調に回復しました。
Hさんは語ります。
「⽕事や病気になったときに落ち着いて対処できたのは、“⼈間は⼤いなるものに⽣かされている存在である”という思いがあった。
社会に必要があるのなら、⼤いなるものは⼒を貸してくださるだろうと、何の抵抗もなく受け⼊れることができました。」

「成功と幸福は違う」という⾔葉に出合い、その⾔葉に衝撃を受けたというHさん。
もともと、そのような感性をお持ちだったのだと思います。
また、「⼈間は⽣かされている」という⾔葉はよく聞きますが、それを深く受けとめることができるのも感性です。
このような⼈が中⼩企業の経営者として頑張っておられることに、気が休まる思いがします。
中⼩企業経営者の⽅は、多くの厳しい経営の局⾯に出合うと思います。
Hさんは、そのような中においても、⾃分を⾒失わずこのような“素直さ”と“感性”を持ってことに当たることの⼀つの⽅向を⽰してくれていると思います。
そして、Hさんの信念には“信仰的な深み”を感じます。

−−当筆のレベルでは遠く及びません。