BCPワンポイント

BCPを策定・実施する際のポイントが、中小企業庁の案内パンフレットに示されています。
緊急時に強い会社をつくるためのポイントと読み替えることもできます。

1.自社が被災する可能性の高い災害を把握する

企業が意識しておかなければならないリスクを確認するための一つの手段として、国や自治体が公表している各種災害のハザードマップ等の情報をチェックする。

経営者が日頃から考慮しておかなければならないリスクを「BCPリスク評価表」として、机上等に置いて常時見えるように(注意を払えるように)しておくことも大切と考えます。
<c.f.>『被災状況の評価』

2.会社にとって大事な業務を挙げてみる

経営者が、次の観点等を総合的に判断して定める。
 *自社が生き残るため、顧客等の信用や市場のシェアの維持
 *自社の財務状況の耐性
 *自社の社会的責任(CSR)

経営上最優先すべき事業のことをBCPでは「中核事業」と捉えています。
災害等の緊急時には、人的資源・物的資源ともに不足の状況に陥ります。
その不足の状況を3割程度の充足と仮定して、その範囲での企業存続を中核事業を核に、経営者自身が判断することが提案されています。
<c.f.>『重要サービス(商品)の検討

3.もし、会社が1か月間操業停止したらどうなるか?

通常、早い時期の復旧を目指すと思われます。
目標復旧時間の設定として、次の視点が例示されています。
○顧客・市場の視点(必然的なニーズ)
 ・発注打ち切りを回避できるか?
 ・市場シェアを維持できるか?
○財務の視点
 ・資金繰り(キャッシュフロー)は確保できるか?

中小企業では、顧客や市場を把握している経営者が把握することとなります。
事前に、「目標復旧時間」に関して顧客や取引先と合意を得ておくことも緊急時に際しての判断の一つの根拠になると思われます。
<c.f.>『復旧ストーリーの事前検討について』

4.復旧に時間がかかる必要資源を把握する

中核事業の継続に必要な経営資源(人、モノ、資金、情報等)を把握すること。
そして、目標とする復旧時間内に調達が困難な経営資源を検討し、その対応策を検討する。

中核事業やその事業の重要業務の継続に不可欠な経営資源の中で、目標復旧時間内での復旧を阻む経営資源は何かを把握することが必要です。
(リスクアセスメント等の手法の活用が考えられます)
しかし、その検討の前提として、主要インフラ施設の復旧があります。
各自治体等から「インフラの復旧目安日数」が示されており、参考となります。
<c.f.>『インフラ&会社に与える影響表(例)』

5.緊急時の資金繰りについて考えておく

企業存続に当たり、事故・災害時の資金繰りが必要となります。

災害等の緊急時における資金繰りは、企業にとっての死活問題です。
業務が停止しても、継続的に発生する支出のため、いつかは資金が底を突いてしまいます。
このための事前対策が重要となります。
<c.f.>『資金面の確保他』

6.代替手段等の事前準備をしておく

下記のような代替手段を日頃から検討しておくことが必要です。
 *緊急時の従業員の安全確保・安否確認
 *代替生産などの代替策の確保
 *連絡拠点・情報のバックアップ 等々

被災後の時間経過の段階において、「各経営資源についてどのような事前対策が必要になるか」を見出し、被害の軽減・事業再開に向けての事前対策を検討し、実施に移していくことになります。
<c.f.>『事前対策の手順一般 ①』

7.従業員や取引先などと事前打合せをしておく

BCPの策定においては、従業員はもちろんのこと、取引先、協力会社などと予め意見交換や調整を行っておくことが重要です。

緊急時に事業を継続していくためには、取引先や協力会社等との連携が必要となります。
次の事項を含めて、意見交換や調整をしておくことが必要です。
 ①目標復旧時間についての合意
 ②被害時の連絡手段(通常以外の手段)
 ③相互の支援内容
<c.f.>『顧客サイド・外注業者等との連絡確保』

8.従業員や取引先などとの連絡手段を考えておく

特に大規模地震発生直後のために、従業員や取引先との連絡が迅速に取れるように、手段を詰めて、合意しておくことが重要です。

安否確認としては下記のような確認方法について、「携帯カード」等により使い方を合意・周知しておくことが有効です。
 *災害伝言ダイヤル(NTTの171)
 *携帯電話の災害伝言掲示板
 *携帯電話のメール機能
 *(上記電話機能が不可能な場合は)徒歩・自転車による確認 等々
<c.f.>『安否確認』

9.今後の実施事項を整理してみる

今後実施すべきことを「事前対策の整備計画」等としてまとめていきます。

各経営資源について「現状把握」から始めていきます。
十分でない場合、「何を?」「誰が?」「何時やる?」等々詰めていきます。
<c.f.>『事前対策の手順一般 ②』
尚、中小企業庁「BCP運用策定指針」の「事業継続能力の自己診断チェックリスト」を活用して、自社の現状を再考してみることも有用です。

10.実施可能なことから順次始める

BCPを会社に浸透させるためには、日常実施されている各種防災訓練と連動させることが合理的です。

地域の防災訓練をはじめ、消防法による消防訓練(消火・避難・連絡訓練等)、労働安全衛生法による安全衛生委員会の活用等が考えられます。
このような日常活動を利用して、BCPを浸透・深化させていくことが合理的なように思われます。
(BCP策定部署と、上記訓練等の担当部署はオーバーラップする組織も多いと考えられます。)
また、中核事業を核としたBCP策定の進行状況の定期的な見直しも重要なポイントとなります。