これまで拙いながらも、「中⼩企業BCP策定運⽤指針」に沿って、「災害への対応」「被災後の私たちの生活」を “生活の継続” という視点で、「FCP:Family Continuity Plan」として考えみました。
もう一度、その動機・目的である「FCPの必要性」について再考して、この一連のFCPに関する記事をまとめたいと思います。
当ブログの姉妹サイトの「BCP策定のメリット」に関する記事を引用してみます
「BCP策定により期待される経営上のメリット」について ①
BCPの一次的な目的は「被災後の事業継続を図っていくための経営戦略」といえますが、次のような経営上の課題におけるメリットも挙げられます。(その1)
事前検討の重要性
- 被災時には経営課題(弱み)が一気に顕在化します!
危機を乗り越え、事業を継続できた場合、(企業の強みを顕在化させた)次なる展開が可能となります。 - イザというときは、思考が回らない!
現実に対応するときは柔軟的対応(レジリエンス)が必要ですが、そのためには普段の準備が必要です。
この事前の準備・検討が大きな意味を持つということは、リスクマネジメントの本質であろうと思います。
★実際の災害時には、BCPの内容の通りになることは限りません。
災害は発生する時期、場所によって様々な状況が引き起こされます。
それぞれの状況に応じてBCPで検討した内容を参考に、柔軟な意思決定・対応が求められていくと考えられます。
BCPの策定過程における検討が、この状況に応じた柔軟な計画変更等の対応に活かされるものと考えます。
検討した内容は、経営管理においても活用できます。
- 安全管理にも深く関連する
安全管理活動と関連させて展開する - 資金計画にも深く関連する
融資計画の策定時に、災害時資金の計算も行う。
被災時に必要となる資金の調達方法の検討
→財務体質の強化
保険更新時の火災保険/地震保険等の見直し - 販路開拓等にも活用可能
BCPに取組みを積極的にPRする
関連企業とのリスクコミュニケーションに活用する
--価格や品質における競争が一定レベルに達している現状において、顧客サイドが求めているのは「安全・安心」です。
<例>災害の危険性が高いとされる地域に立地しているため、様々な災害対策を実施している企業は、災害に強い企業という印象を取引先に持ってもらえると考えている。 - 地域貢献
災害時の地域貢献活動ができるように、日常的に地域と連携しておく。 - ---
組織と個人という違いはありますが、上記と同様のことがFCP作成のメリットとしても考えられます。
「事前検討の重要性」については
被災時には潜在していた防災上の弱点(課題)が一気に顕在化してくることが考えられます。
そして、それらの顕在化した事象への対応において、思考が回らなくなることもあり得ます。
そのときの柔軟的対応(レジリエンス)の準備のための「事前のFCP」ということです。
上記で触れているように、実際の災害に直面したときには、FCPで考えていた内容とは違う場面が考えられます。
寧ろ違うことの方が多いと思われます。
この時、FCPで検討していたことが、対応時の思考において柔軟性をもたらしてくれると思います。
少なくとも、何も計画していなかったときよりはレジリエントに!
【レジリエント】
レジリエントという言葉は、生物生態学においては、下記のように使われているそうです。
生態系は、気象変動、他の動植物の侵入、汚染物質の流入など、常に外乱にさらされている。
弱い生物種であれば、多少の外乱でも絶滅してしまうし、絶滅しないまでも大きなダメージを受けて、元の状態に戻るまでに長時間を要するだろう。
しかし、強い生物種であれば、大きな外乱を受けても受けるダメージは大きくはなく、また元の状態に速やかに戻ることができるだろう。
こうした生物の強さをレジリエンスと言っている。
<From「安全人間工学の理論と技術」小松原明哲著>
その他、上記記事からは次のようなメリットも考えられます
- 金銭面での再考察
火災保険/地震保険等の見直し - 家庭に関連する周辺とのつながりの再認識
地域等とのコミュニケーション(リスクコミュニケーション)の必要性
<参考>
【緊急時の“理性的な行動”とは?】
大阪大学大学院教授 釘原直樹氏が、<雑誌「安全と健康」2021年8月号>において、
『緊急時の理性的行動は、空間的構造、群集密度、脱出許容時間などの物理的要因だけでなく、集団成員の絆といった社会的要因にも左右される。
また、理性的か否かの判断は、当事者か第三者かによって異なる場合がある。』
と、心理学の立場から説かれています。
日頃の心構えとしても多くの参考となる内容が含まれています。
【理性的行動と非理性的行動の発生を規定する条件】
人は、次のような緊急状況に自分が置かれていると認識した場合には、非理性的行動をする可能性がある。
- 自分や大切な人に脅威が迫っている。
- 逃げることはできるが、逃走道が閉じつつある(完全に閉じた場合はパニックは起きない)
- 脅威に対抗できない、他者に頼れないといった無力感を感じる
- 他者との競争がある。
一口に災害といっても、その時間的・空間的広がりはさまざまである。
大地震のように広範囲に、しかもその影響が数年にわたるような災害もあれば、航空機の火災事故のように狭い空間の中で、数分の出来事となるような災害もある。
被災者が置かれる空間的構造も様々である。
一つの狭い出口しかないような部屋に人々が集合している場合もあるし、広場で爆弾が爆発した場合のように、人々が同時に、しかもあらゆる方向に逃走することが可能な場合もある。
また、人々の行動は、狭くて通行が難しい道や迷路、あるいは複数の出口が存在する場合のように、部屋の形状や通路の形状、すなわち物理的空間の形状によって大きく左右される。
そして、被災者の数やその密度(群集密度)も行動に影響する重要な要因である。
状況が被災者にとっていかに絶望的であっても、密度が低ければ、他者を押しのけて脱出するような自己中心的行動が起きる可能性は低くなる。
また、災害発生に気づいてから脱出が完了するまでの脱出許容時間も被災者の行動に影響する。
もし時間がなければ、たとえ他の合理的方法があっても柔軟な対処ができなくなる可能性がある。
これらの物理的要因は上記の状況認識に影響する。
特に、空間的構造は[2]に、群集密度は[3]と[4]に、脱出許容時間は[1]に影響するものと考えられる。
また、「人は、自分は理性的に行動できるが他人は非理性的な行動をするだろうと考える」という傾向を持つという調査結果がある。