“FCP作成の必要性” について①

前号までは、各種災害について「取りまくリスク」という視点で捉えてきました。
今回は、「なぜFCPの作成が必要なのか」についての認識を原点に返って整理してみたいと思います。

当ホームページのBCP記事(下記)より一部を引用します。
<c.f.>『①BCP基本方針の策定について』


何のためにBCPを策定するのか?
BCPを策定・運用することにどのような意味合いがあるのか?
について、経営トップが理解しておくことがBCP策定の前提となります。

なぜなら、経営者による下記の理解と納得が必要となるからです。

BCPは企業経営の延長線上にあるもの。
(あるいは経営の原点に位置するもの)
緊急時の対応は、社員が一致団結して行動することが不可欠であること。

以上の理解のもとに、経営トップが示す方針(経営理念)が形成されることになります。
BCPの基本方針は、経営トップが関与する、「最高レベルの経営理念の表明」といえます。

BCP策定運用指針には、基本方針の項目として下記が例示されています。

  • 人命(従業員・顧客)の安全を守る
  • 自社の経営を維持する
  • 顧客からの信用を守る
  • 供給責任を果たし。従業員の雇用を守る
  • 地域経済の活力を守る

被災時に経営者は何を考える必要があるのか?
そしてそれをどう展開していくのか?
経営者に突きつけられる課題です。
それらへの対応策として、BCP策定運用指針は一つの方向性を示してくれます。


FCPの必要性については、その名のとおり「被災後の生活の継続」です。
なぜ事前検討が必要なのか? については、今さら言うまでもないことですが、その動機&目的について整理・再確認しておくことは、意味のあることと考えます。

人は「重要」でかつ「急ぐ」ことをまずは実行します。
そうしないと生活上にいろいろと支障が出てくることになるからです。
しかし、「重要」だけど「急がない」ことは後回しにされ、「重要でない」けれど「急ぐ」ことに頭と手を向けてしまいがちです。
やらなければいけないとその必要性は分かっていても、重要だが緊急性の薄いものは後回しにされてしまいます。
そして、それが日常化してしまうのです。
災害対応もこれに当たると思います。
そして災害が現実化したときには、「やっておけばよかった」という後悔の念に駆られます。
これは、日常のトラブル等においても多く経験することです。
「当たり前で、スグできそうだけど、できない」という難しい問題です。
逆にいうと、これができる人は尊敬に値する人です。
しかし、その立派な人に成り難いのが私たち一般人です。
良いと思うことでも、切羽詰まって初めて動きだそうとします。

ここに、何らかの仕掛け(仕組み・きっかけ)を日常の中に組み入れる工夫をしなくてはいけないこととなります。
その一つがFCPの作成という文書化努力です。
(“努力して作ったFCPを日常の中に埋もれさせてしまわない”という仕組みもまた必要になります)

もう一度、上記引用したBCP関連記事をもとに考えてみたいと思います。
家族のなかでリーダーシップを発揮できる人が、災害対応の必要性を理解認識していることが前提となります。
そして、FCPを日常生活の延長線上に位置付け、家族全員が一致団結することが必要になります。

FCP作成の基本認識として、下記の再確認します。

  • 家族の命の安全を図る
  • 被災後の家の運営維持を考える
  • 周囲の人の安全にも気を配る

家族の命を守ることは当然ですが、被災後の家庭の維持運営にまで考えを深めておくという点がポイントになります。
そして、それを達成するために、下記課題がリーダーに突きつけられます。

  • 家族各員は何を考え行動する必要があるのか?
  • そして、それをどう事前展開していくのか?

そのためのFCP作成ということです。

県が提示している家族継続計画にも、このFCPの必要性が以下のように記されています。

『地震などの災害から第一に守るべきものは、自分と家族のかけがえのない命です。
「自然災害」そのものを止めることはできませんが、災害を知っておくことと、その備えによって、被害を少しでも小さくすることはできます。
まずは家庭で、どうやって災害から身を守ればよいかについて話し合ってみましょう。』

『夏休みやお盆休みに、家族で防災会議を開催しましょう。
家の中や身の回り、近所に危険な箇所がないか、現在の備えで十分かどうかなど話し合ってみましょう。
避難のルール、災害時の連絡方法なども確認し合いましょう。』

正常化の偏見(正常性バイアス)という人間の特性は無視できません。
毎年発生する台風・豪雨による災害でも問題とされました。
--「避難して下さい」と言われても、広域避難では逃げる場所もありません。
--「想定外の水位」では、屋上へ避難という方が理に適うケースも出てきました。
まさに「判断の柔軟性(レジリエンス)」という課題です。
その危急の時の判断が柔軟にできるようにするためにも「(正常性のバイアスに打ち勝つ)事前の想定検討」は意味を持つと思います。
何度も反復すべき“生き抜くための重要なテーマ”だと思います。