還暦を迎えたKさん
バブルがはじけ始めた頃(1990年始め頃)、40歳代前半のKさんは、40数名を抱える建築会社を義⽗から引き継いで経営されていたそうです。
ところが、⼤きな⼯事の費⽤を回収できず、景気の悪化も影響し、会社を倒産させてしまったとのことです。
Kさんは、善意で⼯事を続けた⾃分を責めたそうです。
「皆さんに迷惑をかけようと思って、今まで仕事をしてきたんじゃない。」
「仕事に誠⼼誠意取り組み、周りの信頼も得て経営を継続してきたのに−−。」
「こんなはずではなかった。」
⾃分を責めては苦しむ、出回のない森をさまようような⽇々。
そのような状況へ、希望の光を与えてくれたのは、家族であり、⽇頃の仲間であり、Kさんを思うあたたかな⼈々の存在だった。
ある先輩は、倒産の事情を察するや、迷わず⾃⾝が所有する家への引越しをすすめ、何から何まで世話してくれた。
その真⼼は、Kさんの苦しい⼼にそっと寄り添い、あたたかい光を与えた。
毎⽇、励ましの電話や⽀援⾦が数多く届いた。
「Kさんなら絶対⼤丈夫!」との顧客の声。
「⽤事ができて、旅⾏に⾏けなくなったから、このお⾦使ってよ」と⾔う知⼈。
親戚から送られてきた荷物の中に、野菜にまぎれてお⾦が⼊っていたこともあった。
倒産から2か⽉後、Kさんは新たな“肚づくり”を始めます。
ある先⼈の⾔葉
『容易に解決できない問題に直⾯したとき、解決への勇気と耐えぬく⼒を与えてくれるのは、⼼づかいと⾏いの累積が必ず報われるという信念である−−−』
「よい⼼でよい⾏いをしていけば、きっと物事は好転する。」
Kさんはそう信じて、毎朝この⾔葉を⼼に刻み、債務整理へと出かけた。
その後、Kさんの⻑男さんが後を継ぎ会社は復活する。
そして、かつての顧客から様々な仕事が⼊ってきた。
⼀度、倒産した会社に新築を頼むというようなことは、普通では考えられない話だそうです。
倒産と同時に去って⾏く⼈が多いのが通例です。
しかし、Kさんの場合は違っていました。
⼈に恵まれていたKさん。
それは、Kさんの⼈柄から出ていると感じます
Kさんは⼀軒⼀軒、⾃分の親の家を直すような気持ちで仕事をしているとのことです。
畳の表替えを頼まれれば、畳を上げたあとの荒床をタワシで擦って雑⼱がけをします。
リフォームを請け負えば、ホコリをかぶっ⾷器を洗い、便器や浴室、換気扇や窓ガラスもピカピカにしていきます。
「仕様書に⼊ってないからできません(やりません)!」というような通常聞くような姿勢ではありません。