【労働安全衛生規則】
第2編第9章(墜落、飛来崩壊等による危険の防止)
第3節(ロープ高所作業における危険の防止)
第539条の2~第539条の9
※「労働安全衛生規則の一部を改正する省令」(平成27年厚生労働省令第129号)
--平成27年8月5日公布・平成28年1月1日施行--
『ロープ高所作業』--平成27年8月5日付け基発0805第1号
高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて昇降器具、いわゆるブランコなどの昇降器具(作業箇所の上方にある支持物にロープを緊結して吊り下げ、当該ロープに労働者の身体を保持するための器具(身体保持器具)を取り付けたものであって、労働者自らの操作により上昇し、または下降するもの)を用いて、労働者が当該昇降器具により身体を保持しつつ行う作業(40度未満の傾斜における作業は除かれる)をいう。
※「作業床を設けることが困難なところ」とは、目的とする作業の種類、場所、時間等からみて、足場を設けることが現実的に著しく離反している場合等における作業箇所をいい、単なる費用の増加によるもの等はこれに当たらない。
●ライフラインの設置(第539条の2)
事業者は、ロープ高所作業を行うときは、身体保持器具を取り付けたロープ(以下この節において「メインロープ」という。)以外のロープであつて、安全帯を取り付けるためのもの(以下この節において「ライフライン」という。)を設けなければならない。
●メインロープ等の強度等(第539条の3)
1.事業者は、メインロープ、ライフライン、これらを支持物に緊結するための緊結具、身体保持器具及びこれをメインロープに取り付けるための接続器具(第539条の5第2項第4号及び第539条の9において「メインロープ等」という。)については、十分な強度を有するものであつて、著しい損傷、摩耗、変形又は腐食がないものを使用しなければならない。
2.前項に定めるもののほか、メインロープ、ライフライン及び身体保持器具については、次に定める措置を講じなければならない。
- メインロープ及びライフラインは、作業箇所の上方にある堅固な支持物(以下この節において「支持物」という。)に緊結すること。
この場合において、メインロープ及びライフラインは、それぞれ異なる支持物に、外れないように確実に緊結すること。 - メインロープ及びライフラインは、ロープ高所作業に従事する労働者が安全に昇降するため十分な長さのものとすること。
- 突起物のある箇所その他の接触することによりメインロープ又はライフラインが切断するおそれのある箇所(次条第4号及び第539条の5第2項第6号において「切断のおそれのある箇所」という。)に覆いを設ける等これらの切断を防止するための措置(同号において「切断防止措置」という。)を講ずること。
- 身体保持器具は、メインロープに接続器具(第一項の接続器具をいう。)を用いて確実に取り付けること。
●調査及び記録(第539条の4)
事業者は、ロープ高所作業を行うときは、墜落又は物体の落下による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所について次の事項を調査し、その結果を記録しておかなければならない。
- 作業箇所及びその下方の状況
- メインロープ及びライフラインを緊結するためのそれぞれの支持物の位置及び状態並びにそれらの周囲の状況
- 作業箇所及び前号の支持物に通ずる通路の状況
- 切断のおそれのある箇所の有無並びにその位置及び状態
●作業計画(第539条の5)
1.事業者は、ロープ高所作業を行うときは、あらかじめ、前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。
2.前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。
- 作業の方法及び順序
- 作業に従事する労働者の人数
- メインロープ及びライフラインを緊結するためのそれぞれの支持物の位置
- 使用するメインロープ等の種類及び強度
- 使用するメインロープ及びライフラインの長さ
- 切断のおそれのある箇所及び切断防止措置
- メインロープ及びライフラインを支持物に緊結する作業に従事する労働者の墜落による危険を防止するための措置
- 物体の落下による労働者の危険を防止するための措置
- 労働災害が発生した場合の応急の措置
3.事業者は、第1項の作業計画を定めたときは、前項各号の事項について関係労働者に周知させなければならない。
●作業指揮者(第539条の6)
事業者は、ロープ高所作業を行うときは、当該作業を指揮する者を定め、その者に前条第1項の作業計画に基づき作業の指揮を行わせるとともに、次の事項を行わせなければならない。
- 第539条の3第2項の措置が同項の規定に適合して講じられているかどうかについて点検すること。
- 作業中、安全帯及び保護帽の使用状況を監視すること。
●要求性能墜落制止用器具の使用(第539条の7)
- 事業者は、ロープ高所作業を行うときは、当該作業を行う労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させなければならない。
- 前項の要求性能墜落制止用器具は、ライフラインに取り付けなければならない。
- 労働者は、第1項の場合において、要求性能墜落制止用器具の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。
●保護帽の着用(第539条の8)
- 事業者は、ロープ高所作業を行うときは、物体の落下による労働者の危険を防止するため、労働者に保護帽を着用させなければならない。
- 労働者は、前項の保護帽の着用を命じられたときは、これを着用しなければならない。
【保護帽:メモ】
*高さ1mから床に頭をぶつけたときの頭部に加わる衝撃荷重値は
--保護帽を被らないときは 16.7kN
--飛来・落下物用(衝撃吸収ライナーなし)装着のときは 11.8kN
--飛来・落下物用/墜落時保護用(衝撃吸収ライナー入り)装着のときは 4.7kN
※発泡スチロールを用いない六角柱の衝撃吸収体(ブロックライナー)をプラスチック製の内装体に一体成形した、帽子内通気性の良い衝撃吸収ライナーが開発されている
●作業開始前点検(第539条の9)
事業者は、ロープ高所作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、メインロープ等、安全帯及び保護帽の状態について点検し、異常を認めたときは、直ちに、補修し、又は取り替えなければならない。
墜落災害防止措置の強化のために、平成31年(2019年)の法令改正で、「安全帯」は「墜落制止用器具」と名称が改められ、性能要件を定めた構造規格も改正されました。
安全帯はフルハーネス型の規格へ変更となっています。
(旧規格に基づく安全帯は、2022年1月2日以降は使用できなくなります)
原則、墜落制止用器具は、フルハーネス型を使用することとされていますが、墜落時に地面に到達する恐れのある場合等(高さ6.75m以下)は、規格に適合する胴ベルト型の使用が認められています。