避雷設備の目的は、建築物などに接近する雷撃を受け止め、雷撃電流を大地に放流することであり、その際、建築物及び人に対する被害を防止することにある。
避雷設備の設置については、建築基準法33条で「高さ20mをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない」(工作物については、建築基準法第88条で準用)と規定されている。
構造については、平成12年建設省告示第1425号でJISA4201「建築物等の避雷設備(避雷針)」によるものと指定されている。
雷による被害の発生事例は、大きく分けて、「外部避雷」に関係するものと「内部避雷」に関係するものとがある。
外部避雷に関係する被害
- 鉄筋コンクリート造の建築物の屋上パラペット部に直撃雷があり、その部分のコンクリート塊辺(50×50cm程度)が地上に落下している例が多くある。
この場合、そこに人がいてコンクリート塊辺が当たれば致命傷を受ける恐れがある。 - 高層ビルの外壁に雷撃があり、その一部に欠損を生じ、落下するというケースもある。
適法に設置された避雷設備で保護角内で生じた事故ではある。
落雷現象は複雑なものであり、「普通保護」の範囲では、現在のところ予測は困難なようである。
内部避雷に関係する被害
配電線から進入する雷サージや落雷時の引き下げ導線とその周囲との間に雷電流による電磁誘導などによって生じる電位差などによって、コンピューター、医療機器などの損傷、誤動作を生じることがある。
現在のJIS A 4201による避雷設備の構造基準は、保護能力を「完全保護」「増強保護」「普通保護」「簡易保護」の4等級に分類すれば「普通保護」に相当するものであり、また、外部避雷に関係する被害を防止するという考え方に重点をおいて規定されていると思われる。
したがって、より効果的な避雷設備の設計に当たっては、建築物等の重要度、IKLマップ(年間雷雨日数分布図)、IEC(国際電気標準会議)が策定したIEC 1024 1(雷に対する建築物の保護)規格などを参考に、建築物の先鋭的な形状のコーナー部の受雷部を増強した「増強保護」方式を採用することや内部避雷に対する対策を考慮する必要がある。
From「建築設備士更新講習テキスト2000年版」