建築物の火災時の延焼の拡大を防止するため、水平区画、たて穴区画、異種用途区画の防火区画が規定されている。
建築設備にあっても、このような防火区画を電気配線、配管、ダクトなどが貫通する場合は、区画貫通部の処理を行ない、延焼の防止を図ることが規定されている。
また、配管、ダクトなどの区画貫通部の埋め戻しが不十分であったために、火災の伝播、ガス事故などが拡大した事例もあり、十分な注意が必要である。
防火区画を貫通する給排水管が鋼管などの不燃材の場合にあっては、鋼管などの配管の貫通部の隙間をモルタルまたはロックウールなどの不燃材で確実に充填し、地震などにより脱落しないよう措置することが規定されている。
和風便器あるいはグリストラップなどの器具が床の防火区画を貫通する場合は、開口部が大きいこと、あるいは陶器などで割れやすいこと、耐火措置がなされていないことなど考慮し、防火措置が必要である。
ダクトが防火区画を貫通する場合は、防火ダンパーが設けられる。
その作動は、一般に、水平区画貫通の場合には熱感知器(72℃温度ヒューズ)連動、たて穴区画または異種用途区画貫通の場合には煙感知器連動によるものである。
防火ダンパーの設置及び構造などは、建築基準法施行令、告示により定められている。
防火ダンパーは、ダクトに接続されているので、火災によりタクトが脱落した場合、防火ダンパーの取り付けが弱く防火ダンパーが欠落した場合、防火区画などに穴が開いた状態となり、火煙の延焼経路となる恐れがあるので、防火ダンパーは堅固に取り付ける必要がある。
また、防火区画を貫通する部分は1.5mm厚以上の鉄板とすることとなっている。
この鉄板と防火区画の壁との隙間は、モルタル、ロックウールなどの不燃材などで充填し、地震などにより欠落しないように施工する必要がある。
火災事故で大火災となった場合のほとんどは、防火区画が構成されず、防火戸またはダクトなどの防火区画貫通部から他の区画に延焼してしまった事例である。
また、厨房ダクトについては、防火壁は良好であっても、防火ダンパーを日頃維持管理していなかったため、厨房の油が防火ダンパーの作動部に付着し、固形化して防火ダンパーが作動せず、ダクト内を火煙が通り延焼した事例もある。
ケーブルの防火区画貫通部の措置
他の設備部材と同様に建築基準法の上のせ基準により適用を受けることとなる。
ケーブルは電線の絶縁材、被覆材が不燃材でないため、建築基準法施行令112条第15項および第129条 の2の5第1項第七号に抵触することとなり、(財)日本建設センターの防災性能評定済工法が採用されているが性能規定化に伴い、特殊な材料、工法は建設大臣の認定が必要となる。
冷媒配管の防火区画貫通部の措置
冷媒配管は、銅管の周囲に高発泡ポリエチレン(PE)を保温材として被覆している。
PEは不燃材でないので、建築基準法施行令第112条第15項の対応においては当該部分をロックウールなどに置き換える方法が採用されていた。
しかし、結露によるカビおよび腐食の発生の恐れがあるため、PE被覆を除去しない(財)日本建設センター防災性能評定済工法が多く採用されていたが、今後は性能規定化に伴う建設大臣の認定が必要となる。
From「建築設備士更新講習テキスト2000版」