苦難の受け止め方 ②

「すべての出来事を前向きに受けとめて、誠心誠意努力させていただく」この言葉がKさんの座右の銘だそうです。
しかし、そのように受けとめることができるような心境になるまでは、人生という長い時間が必要であったとのことです。
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Kさんの職業人生の初期に、無力感と劣等感という時期がありました。
自分より高位資格者への劣等感。
過度のがんばりと生活環境の急変によるストレスで、急性不良性症候群という腸の病気を患います。
そして、それをクリアすれば、先輩からのいじめという次の苦難の発生。

「今の職場が自分に合っていないのかもしれない」との思い。
「自分は誰にも必要とされていない」という思考の悪循環に陥ってしまい、しだいに居場所をなくしていく。

そんなとき、不慮の事故によって脊髄を損傷し、両手に松葉杖をついた状態だった夫となる人と出会い、そして結婚。
体に障害の残る夫の手助けをする中に 自分の生き甲斐を見出していきます。

結婚後、苦労しながらも努力を続けてきたなかで、身内の会社の倒産という突然の出来事が発生。
保証人をしていた関係で、多額の借金が降りかかってくる。
「これまでいろんなことを我慢してきたのに」「尽してきたのに」と不満が次々と浮かんできます。

同時に、「自分はもう少し人間ができていると思っていたが、こんな問題にでくわすと、不満に苛まれるダメな自分である。」「結局何も成長できていなかった自分」を感じる。
反省し、自分の不満心を辿ってみると、「何かをしてあげたい」と思っていたのに、いつの間にか「一生懸命私がやってあげている」という自分中心の気持ちに変わっていたことに気づく。
初心に戻ることで不満の感情は落ち着きを見せ始めたが、それでも何か釈然としないものが残る。

「自分の身に降りかかる試練をすべて自分が引き受けるということは先人の教えにより理解はしていますが、感謝するという気持ちまではなかなかなれませんでした。」

時間は経ち、64歳のとき、Kさん突然の病気に罹ります。
突然の出来事に急いで病院に駆け込みますが、病床での苦痛のなかKさんは以前とは違う心境を感じます。

長いこと人生をしていると いろいろなことを経験します。
自分たちの努力だけではどうしようもできない障害も発生します。
不満心も起きてきます。
しかし、時間が経つと、その苦難の出来事を、自分を眺めることができる立ち位置で反省ができる人もいます。
ですが、大きな出来事に対しては、そのような心境になるまでには多くの時間がかかるものです。

「如何なる深い教えも自分で実際に体験しないとほんとうに自分のものにはならないものですね」とKさんは言われます。
深い意味を含んだ言葉だと感じます。