<災害事例(業界関係書籍より)>
清掃クルー5名程度で、ビルの高層階部において清掃作業をしていたとき、スチーム洗浄機へ給水をしていた蛇口のホースが外れて、相当量の漏水が発生し、その漏水がエレベーターカゴ内にも及んだ。
そのカゴ内の漏水を拭き取る作業において、カゴ天井部から漏れているというので、カゴ内天井点検口を開けて、上半身を乗り出して拭き作業をしているとき、突然エレベーターが動きだし、カウンターウエイトとカゴの間に挟まれ被災したという事例。
死亡という痛ましい結果となりましたが、ナゼこのような状況が現出されてしまったのか?
「エレベーターの機構を知らない者が、エレベーターの関連機器の動作域に入り被災」という、作業者の無知という結論で終わらされてしまいそうですが、このクルーの人たち、とりわけカゴの上まで登って作業をしていた被災者は仕事熱心であったと思われます。
目の前の状況を何とかしたいという責任感による反射的な行動がもたらした災害ですが、その危険行動を静止するような周囲状況はなかったのか?
被災者はエレベーターの危険性を教えられていなかったのだろうか?
誰かビル内の人がエレベーターの呼びボタンを押したら運転が始まるような状況での作業であり、それを見ていた周りの人はどうしていたのだろうか?
エレベーター異常時の対応についてのビル内の周知/連絡体制はどうであったのか?
等々の疑問が浮かんできます。
災害の大騒ぎのあと、(経営者、管理者の書類送検、賠償等の問題も出てくると思われますが)「今後の対応」として、上記疑問点も含めて、次のような事項が挙げられると思います。
- エレベーターかご上部で作業を行う場合は、エレベーターの運転を停止すること。
- エレベータの構造、運転操作について一定レベルの教育を受けていない者に、エレベーターの作業をさせないこと。
- 通常の清掃作業とは異なる、異常状態対応(非定常作業)となった場合の連絡対応体制を整備しておくこと。
等々
また、このような災害が発生すると会社の管理体制についても言及されると思います。
- 安全衛生管理体制は整備されていたか?
- 管理体制があったとしても、組織として活動していたか?
- 教育訓練はされていたのか?
- 管理者、経営者の安全への姿勢は?
(作業遂行目標達成onlyではなかったか?)
水漏れ対応という異常事態も想定してリスクアセスメントをしておく必要があったということです。
(人の行動も含めて)通常の想定を超えた以上事態(不具合事象)が発生するものですが、「簡単に“想定外”としないよう、日頃から作業にまつわるリスクを洗い出し、対策を検討して、全員で共有しておく」ということは作業管理面におけるリスクアセスメントのひとつの目標です。