<災害事例(業界関係書籍より)>
病院における清掃作業中に、使用済みの注射針により刺傷し、その後体調不良となって病院で受診した結果、HIV(エイズウイルス)に感染していることが判明したが、受診数日後に死亡した。
被災者は受診時「病院の手術室などで清掃作業中、何回も針を刺したことがある」と説明していた。
(HIV感染による死亡、男性57歳)
この典型的な注射針災害は平成13年(2001)頃に発生しています。
この事故が発生した当時の「病院側の管理の杜撰さ」と「受託事業者の低い危険認知度」が推察されます。
平成元年(1989)、当時の厚生省(現厚生労働省)より「医療廃棄物処理ガイドライン」が出されていますが、そのときの実態調査では「病院清掃従事者のほぼ全員が1回から数回、針刺し災害を受けていた」とのことです。
1991年の廃棄物処理法の改正により、感染性廃棄物は、新たに設けられた「特別管理廃棄物」(爆発性、毒性、感染性などのある廃棄物)に含められ、病院などから排出される「特別管理産業廃棄物」と在宅患者の治療等に伴う「特別管理一般廃棄物」に区分されています。
処理基準や処理委託基準などが定められ、「医療廃棄物処理ガイドライン」もこれを受けて廃止されています。
そして、厚生省(現厚生労働省)は1992年に、同ガイドラインに代わるものとして「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」を出しました。
この「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」は平成24年5月に更新されています。
このマニュアルにより、注射針災害対策についても細かく定められています。
HIVについても「HIV 医療機関内感染予防対策指針」が策定されているようです。
事業者としては、これらの策定されたガイドライン、指針、マニュアル等の遵守に努めていくことになります。
そして、もし災害が発生した場合には、何処に問題があったのかこれらの指針等で分析し、原因と対策についての方向付けをすることになります。
病院側における日常の安全衛生活動としては、これらの指針等に基づく「管理の徹底」と「受託業者等の関連事業者への周知徹底」、そして「受託業者等の作業者への教育の徹底の確認」ということになります。