熱中症<参考③> 加齢と体温調節機能

○高齢者の体温調節反応

高齢になると、体温調節反応が鈍くなり、暑さ寒さへの対応能力が弱くなってきます。
気温が急に上がっても、皮膚の血流が増える対応が遅く、その増加度も少なくなります。
また、汗が出始めるのも遅く、汗が現れる体温も高くなり、その増え方も鈍く、安定するまでの時間も長くなります。
特に、男性はこの傾向が目立ってくるそうです。
また、気温がゆっくり上がったり下がったりする場合でも、皮膚の血流も発汗も応答が遅れ、特に気温が下がりつつあるときに、汗の減り方が遅く、汗の止まりが遅れるため、皮膚の血流が減るのも遅れ、若い人より体温が下がりやすくなります。

○高齢者の汗腺機能の衰え

高齢者の発汗の応答が遅れる原因として、皮膚の温度感覚の鈍りによる温度差の感知能力の低下が挙げられます。
特に寒さを感じる機能の低下が大きくなります。
高齢者の汗腺機能の衰えの原因には、神経の興奮伝達機能の低下や、血管の弾性が減少し、皮膚の血流の変化が遅れることが挙げられます。
こらは上下肢で起こりやすく、特に下肢で目立つようになります。
逆に頭部や顔面の汗腺機能の衰えは遅れるため、頭や顔にたくさん汗をかくようになります。
これは、他の部位で汗が減った分を補おうとして多くなるためです。
加齢による汗腺機能の低下を、発汗神経の働きにより、発汗量は大きくは減らない状態が維持されますが、寒さに耐え得る限界は、高齢化とともに低下していきます。
※発汗量は、男性で70歳、女性で80歳以上になると、ハッキリと低下するそうです。

○高齢者の高温環境下での作業管理

高齢者は、夏に向かって暑さへの順応が遅れ、また発汗活動の増加も遅れ、その増え方も少なくなります。
また、夏の終期の発汗活動の減少経過も遅れます。
これは温度を感じる神経終末部の数の減少が関係しています。
高齢者には、以上の状況を踏まえた作業管理が特に必要となります。

また、加齢により体温調節機能が低下してくるということを高齢になった人は自覚する必要があます。
そして、その機能低下の傾向に合わせた対応を自らとっていくことが必要です。
とくに高温環境下での対応が重要になります。