環境衛生管理関係事故例(給水設備関係)

クロスコネクションによる事故

数棟ある団地で、便所の洗浄水に工業用(中水)を使用し、便所の洗浄水以外は上水道を使用するよう設計されていた。
建築物内においては、それぞれの配管の色別をしクロスコネクションの防止策を行ったが、屋外埋設管において、上水配管と中水配管を間違えて続していたもので、入居者が体の変調(下痢)を訴え、水質検査をした結果、その誤接続が判明した。

受水槽のオーバーフロー管からの汚水の浸入

受水槽室の中を汚水管が横断しており、汚水管の継目が地震、地盤沈下などにより破損し、受水槽室内に汚水がたまり、受水槽のオーバーフロー管から汚水が受水槽に入った。
地下の受水槽室内では、特に、給水以外の汚染につながるような配管は貫通しないようにする必要がある。

病原性大腸菌O-157による事故

病原性大腸菌O-157が日本で一般的に知られるようになったのは1990年、埼玉県内の幼稚園での井戸水の汚染事故であった。
園児200人以上が感染し、うち2人が死亡したもので、浄化槽からの放流水が井戸水に浸入し、井戸水が汚染されたものと思われる。

病原性大腸菌O-157は、腸管出血性大腸菌に分類されるが、食品や水などと一緒に体内に入り、腸管内に定着したのち、増殖し、下痢、出血、肝臓機能などの症状を引き起こすものである。

病原性大腸菌O-157による中毒事故を防ぐためには、水利用設備の管理者は給水系周辺を清潔に保ち、貯留槽の清掃、あるいは水質検査を定期的に行い、適正な残留塩素の確認を行う必要がある。

O-157に関しては、1996年5月頃から8月にかけ、O-157による食中毒が全国で相次いで顕在化し、わずか3か月間に9,578人が中毒となり、うち11人が死亡するという大きな被害も発生している。

レジオネラ菌による事故

事故は、病院新生児室でレジオネラ菌に新生児が院内感染し、うち1人が死亡したもの。
新生児室のある小児科病棟内の温水タンクの蛇口や加湿器、ミルクの加湿器からレジオネラ菌が検出されている。

レジオネラ属菌は、土壌をはじめ地下水や河川水など広く自然界に生息していて、空調用冷却塔など人工環境中で増殖し、感染を引き起こす機会が多いようである。

レジオネラ菌による感染事故を防ぐため、ビル内の水利用設備は、以下の基準を目安として維持管理する必要がある。
(平成11年厚生省生衛発第1679号参照)

冷却塔

  • 冷却塔水の色、透明度、堆積物などについて、週1回程度の点検を行う。
  • 冷却塔の清掃は、月1回程度行う。
  • 必要に応じ、冷却水の全換水を行う。

加湿器

  • 超音波方式など、水を貯留する加湿器では、貯留部にレジオネラ属菌などの微生物が増殖する可能性があるため、貯留部の定期的な清掃を行う (超音波方式の場合は月1回程度)。
  • 通風気化式の場合、水の溜まる部分や流下する部分に細菌が増殖する可能性があるので、定期的な清掃を行う。

修景用噴水、滝

  • 設備は定期的に清掃する。
    循環水については、常時濾過し、必要に応じ塩素剤など薬剤投入により殺菌処理を行う。

循環式給湯設備

  • 循環式給湯設備の給湯温度は、末端で55℃以上を保持する(レジオネラ菌は55℃以上で死滅することが確認されている)。

    24時間風呂でのレジオネラ菌汚染については、業界が自主基準を定めて対応している模様である。

From「建築設備士更新講習テキスト2000版」