ある宝石店の話

ある宝石店での話です。
その宝石店の女性経営者は、ある宝石が売れずに困っていました。
当時は観光シーズンの真っ盛りで、お店はお客で溢れていたそうです。
しかし、その宝石は値段の割には質の高いものだったのに、なぜか売れませんでした。

なんとかその宝石を買ってもらおうと、彼女はいくつかの方法を試しました。
①陳列ケースの目立つところに移し、客の注意を引こうとしました。
②売場の店員に、その品をもっと積極的に客に勧めるようにも言いました。
しかし、いずれもダメでした。

頭にきた彼女は、「この陳列ケースの品は、全部価格を 1/2 にしておいて!」という殴り書きしたメモを売場の主任に残し、買い付けの出張に出かけてしまいます。
損をしてもいいから、とにかくその商品を始末してしまいたかったのです。

なので、数日して店に戻ってきた時、陳列ケースの商品が全て売れているのを見ても、彼女は特に驚きませんでした。
しかしその後、驚くべき事実を知ることになります。
メモを受け取った主任は、殴り書きされた「1/2」を「2」と読み間違えて、なんと商品の値段を最初の2倍の価格にして売り出していたのでした。
それなのに宝石はすべて売れていたのです!